先月28日(土)、診療を終えてから新幹線で伊豆に向かった。その際、車内で一冊の週刊誌を読んでいて「はっ!」と驚いた。それは先日アカデミー賞の外国語映画賞に輝いた「おくりびと」についての記事であった。この映画の原作本と言われる「納棺夫日記」の著者が20年前からの知り合いである青木新門氏であったからである。16年前に私のクリニックに来院されたとき、一冊の封筒を渡された。その中には一冊の本が入っていた。その本が今「時の人」ならぬ「時の本」である「納棺夫日記」であった。
青木さんとは富山に住む兄を通じて知り合った。その後青木さんが勤める冠婚葬祭会社の富山平安閣(現オークス株式会社)社長奥野博氏が私のクリニックで治療を受け元気になられ、それが縁で富山市に臨時のクリニックを設けた。その時いろいろとお世話をしていただいたのが青木さんである。社長からは「うちの青木はこれでも詩人であり、作家なんだ。」ということを聞かされた。確かに青木さんは信心深く、社会通念を持った方である。
私のクリニックに治療に来られたとき、何回かゆっくりお話しすることができた。そのとき冠婚葬祭に対する考え方や思想を熱っぽくお話されたのを今でも記憶している。その中でも感銘を受けたのは「生への執着を無くして、あらゆるものに対しいたわりと思いやりを持たなければならない」という言葉だ。青木さん自身そこまでたどり着くのに並大抵ではないご苦労があったことを、伺っているだけに言葉に重みがある。人間は努力しても報われる場合と、報われない場合がある。その違いは自分自身の強い信念と目的意識をしっかり持っているか否かである。ともかく夢であった小説家として認められたことは親しい人間として喜ばしい限りである。
話題シリーズ44
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