「おくりびと」に思うこと(2)"蛆の光"が"オスカーの光"へ

W45.jpg    「おくりびと」がアカデミー賞を受賞してから日本中が沸きかえっている。皮肉なことに暗いテーマの映画が暗い時代に光を当てようとは誰が想像できただろうか。

本木さんが27歳のとき北インドのベナレス(ヒンズー教の聖地)へ訪れたときヒンズー教徒が死者を荼毘に付している状況を目の当たりにした。そのとき「生」と「死」のカオスを見た思いがした。20代の彼がその状況の中で"蛆の光"を見た。その思いが強く彼の心に焼きつき日本に帰国した。この思いを映画化したいと考えていた。そのときに出合ったのが青木さんの『納棺夫日記』であった。その後二人の間で親交が深まり、15年の歳月の後、今回の作品となった。

私が一番感じるのは、本の一節にある「職業に貴賎はない。いくらそう思っても「生」と違い「死」そのものをタブー視する現実がある限り納棺夫や火葬夫は無残である。昔でいえば河原乞食とさげしまれていた職業である。青木さんは30年以上も納棺夫として生き続け、社会の冷たい目にさらされる中でやり遂げた。一時叔父に親族の恥と罵倒されたこともあったという。それが今回の授賞で全てが報われた思いがする。

W45b.jpgこの映画は人と人の絆、家族の絆、死者と生者の関係、そんな当たり前のことを現代人は忘れかけていたことに気づかせてくれたような思いがする。他人を思いやる気持ちなど先進国の人々が忘れかけていた心をこの映画が気づかせたのではないだろうか。今アメリカはオバマ大統領の誕生でまさに変わろうとしている。そういうときだけにこの映画が国内外で高い評価を得たことは素晴らしい。またこの映画の原作者や監督が同じ富山出身というのも何かの縁ではなかろうか。青木さんと本木雅弘さんの今後の活躍を期待したい。
参考資料:納棺夫日記(桂書房)

話題シリーズ45

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